栃木県那須郡那珂川町小砂(こいさご)。
「日本で最も美しい村」にも選ばれたこの静かな里山で、天保の時代から今日まで焼き継がれてきたのが「小砂焼(こいさごやき)」です。 地元の土を使い、地元の職人が焼き上げる。その素朴ながらも気品ある佇まいは、古くから多くの人々に愛されてきました。

【 歴史 】水戸藩主が見出した「産業振興の起点」

小砂焼の歴史は、今から約190年前の天保年間にまで遡ります。 かつてこの地は水戸藩領でした。
当時、水戸第九代藩主・徳川斉昭(なりあき)公は藩政改革の一環として殖産興業政策を進めており、その政策の一つに、陶器製品の国産化というものがありました。これは、「陶器製品を国内(水戸藩内)で賄うことができれば、その分だけ金が他領へ出ていかなくて済み、自国(水戸藩)の経済が豊かになる」という考えによるものです。
その一環として、水戸藩内で陶土が取れる場所を調査させたことで、天保元年にこの地で良質な陶土が見いだされたことが始まりとされています。

小砂焼の歴史をさらに詳しく

江戸時代 1829年(文政12年)徳川斉昭が30歳にして水戸第九代藩主に就き、藩政改革が始まる。斉昭公は、領内で消費する物資を自らの地で生産すれば、藩の利益となり、それ…

【 素材 】小砂の地が育む「陶土」

小砂焼の最大の特徴は、何よりも長年受け継がれてきた製法そのものが今も生き続けていることです。そして、それを可能にしているのが「地元の土」と「地元の清らかな水」そして、それらに合う「釉薬」の存在です。
産地である小砂地区から採掘される「小砂陶土」は、鉄分が少なく、石英を多く含む土で、粘土分を含みながらも粘り気が弱いのが特徴です。

この土があるからこそ、小砂焼特有のどっしりとした手馴染みの良さと、深みのある質感が生まれます。また、鉄分が少ないため素地色は強く出すぎず、石英を多く含むことで耐火性が高まり、形が崩れにくい性質があります。その結果、釉薬の色合いが美しく発色します。
地域の自然の恵みをそのまま形にする。その純粋な成り立ちが、小砂焼に揺るぎない個性を与えています。

【 特徴 】炎が生み出す「金結晶」

現代の小砂焼を象徴する意匠といえば、表面に浮かび上がる「金結晶(きんけっしょう)」です。 これは、釉薬に含まれる成分が窯の中の高温で溶け合い、冷却される過程で結晶化して現れるものです。砂金を散りばめたような落ち着いた黄金色の輝きは、見る角度や光の当たり具合によって、結晶の表情がやわらかく変化します。

窯の中のわずかな温度変化によって結晶の出方は一つひとつ異なるため、二つとして同じ表情のものはありません。
炎と土が織りなす「一期一会の美しさ」こそが、小砂焼の醍醐味です。

結び

歴史ある伝統を守りながら、現代の食卓や暮らしにも調和する。 小砂の風土が育んだ、温もりのある手触りと黄金の輝きを、ぜひお手にとってお確かめください。

金結晶以外にも様々な色があります。

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色彩の深淵

金結晶だけではない、小砂焼の多彩な表情。 小砂焼の代名詞として語られる「金結晶(きんけっしょう)」。 しかし、小砂の土と釉薬が作る世界は、それだけではありません…